ガジェット

米元高官、中国排除では産業再興できずと警告

フォードとCATLの提携を巡る対立を機に、元米高官が外資排除の産業政策を批判。技術導入の必要性を説いた。

7分で読める SINGULISM 編集チームが確認・編集

米元高官、中国排除では産業再興できずと警告
Photo by Lenny Kuhne on Unsplash

9月8日、米国運輸省はショーン・ダフィー長官からフォードのジム・ファーリー最高経営責任者に宛てた書簡を公開した。 書簡ではフォードが将来を中国企業と結び付けすぎていると批判した。 CATLからの電池技術導入や欧州でのGeelyとの提携を名指しし、中国への依存低減を求めた。 フォードは直ちに反論し、ミシガン州の電池工場は自社が完全に所有し運営すると説明した。 CATLとの関係は技術使用許諾に限られると強調した。 9月9日にはファーリー氏が批判には根本的な誤解があると表明した。 先端製造能力を米国内に導入する取り組みだと主張した。 こうした対立を背景に、元ホワイトハウス国家経済会議委員長のブライアン・ディース氏が9月10日に外交専門誌に寄稿した。 虎嗅網 の IPP評論© の報道では、同氏が米国の外資規制が産業政策を弱めていると論じたと伝えている。

フォードとCATL提携への批判

ダフィー長官の書簡は、フォードの電池戦略を安全保障と産業自立の観点から問題視した。 ミシガン州の電池工場計画は、工場の所有と運営をフォードが担う枠組みである。 CATLは技術の使用許諾を提供する立場にとどまる。 それでも運輸省は中国との結び付きが過度だと判断した。 欧州におけるGeelyとの協力も同様にやり玉に挙げた。 国内製造能力の強化を優先すべきだと求めた。

フォード側の説明は一貫している。 工場の資産も雇用も米国に帰属するとしている。 技術導入によって量産の立ち上げを早める狙いがある。 ファーリー氏は9月9日の発言でこの点を重ねて示した。 先端の電池製造手法を国内に定着させることが目的だと述べた。 所有権を手放さずに知見を吸収する方式だと位置付けた。

工場の所有権と運営の主導権を保持しながら、中国技術を学び、自律的な生産能力を蓄積できる可能性を示している

ディース氏はこの方式を模範と評価した。 米国企業が主導権を握ったまま学ぶ過程に価値があるとみなした。 産業戦略のひな形にすべきだと主張した。

リスク偏重の審査制度が招く停滞

ディース氏の批判の中心は対米外国投資委員会の運用にある。 同委員会は安全保障上の危険の評価に特化している。 投資がもたらす技術獲得や生産性向上の効果は対象外である。 そのため企業は電気自動車や蓄電分野で必要な専門知識を得にくい。 同氏は米国が重要な手段の入手経路を自ら塞いでいると述べた。

2022年成立のCHIPS・科学法は国内製造基盤の強化を掲げた。 半導体や科学技術への歴史的な投資を含む。 しかし外資や技術協力の排除が進めば効果は減衰する。 同氏は産業政策の成果を自ら損なう構図だと論じた。

排除の対象は株式取得だけではない。 合弁や知的財産の使用許諾、知識提供を伴う協力全般に広がる。 大統領経済諮問委員会の委員長は外国投資家の保有資産への手数料を提案した。 上下両院では外国資本の流入への課税を求める超党派法案も出た。 連邦から州や地方まで締め出しの動きが重なる。 データ貯蔵や重要鉱物加工、半導体製造で最新技術の利用が難しくなる。 同氏は最終的に米国の利益を損なう戦略だと述べた。

外国技術で発展した米産業の歴史

ディース氏は米国の産業史を振り返り、外国知識の活用を強調した。 19世紀初頭の火薬工業が代表例である。 当時の米国は英国への依存から脱する必要があった。 フランスからの投資を背景に化学者のエルテール・イレネ・デュポンが渡米した。 フランスの先進製造技術の知見をもたらした。 1802年に創設された会社は政府最大の火薬供給者となった。 その後も化学や素材分野の革新の中核を担った。

1980年代初頭の自動車産業も同様の転換を経験した。 米自動車大手は日本の競合に後れを取った。 GMとトヨタはカリフォルニア州フリーモントの閉鎖工場を共同で再稼働させた。 日本の製造方式を導入し、米国の従業員をほぼ維持した。 生産品質と効率の改善につながった。 外国投資と専門知識が国内産業を押し上げた前例だと同氏は位置付けた。 世界技術からの切り離しではなく再現が必要だと主張した。

中国の外資活用に学ぶという視点

ディース氏は中国の外資誘致の手法に注目した。 中国は安価な土地や税優遇でテスラの独資工場を誘致した。 国内自動車大手は供給網や製造工程を通じて技術を吸収した。 やがて外国勢を追い越す競争力を獲得した。 中国がかつて海外投資や技術、生産経験を取り込んだ過程だと整理した。

米国も同様の段階にあると同氏はみなした。 電気自動車や蓄電では中国が技術の最前線に立つ。 追い付くには技術使用許諾や合弁の活用が不可欠だと述べた。 所有と運営の主導権を国内に残す条件付きの協力が有効だとした。 模倣ではなく学習の仕組みとして設計すべきだと論じた。

具体的な承認経路創設の改革提案

ディース氏は拒否のための仕組みから承認のための仕組みへの転換を求めた。 現行制度は投資に否と言う手段に偏ると指摘した。 有益な協力を後押しする経路が乏しいとした。 透明性の確保と情報保護を前提に外国資本を受け入れる枠組みが必要だと述べた。 重要な場面では米国人が主導権を握る条件を付すとした。

同盟国向けには審査の簡素化と適用除外の拡大を提案した。 中国などの注目国向けには国防総省のFOCI制度を参考にすべきだとした。 独立した米国人取締役会の設置が条件になる。 情報の遮断措置や権限分離も求めた。 安全隔離を徹底した上で投資を認める方式である。 外国資本と技術を生かしつつ危険を管理できると主張した。

編集部の見解

短期的影響について述べる。今後3か月から6か月ではフォードの電池工場計画の審査と政治的応酬が焦点になると見る。運輸省の書簡が追加条件や調査につながれば、量産時期や調達計画に影響が出る可能性がある。電池や部品の国内調達を巡る議論も活発になると評価する。

長期的視点について述べる。今後1年から3年では技術使用許諾を容認するかどうかが電池と蓄電の競争力を左右すると見る。所有権を国内に残す方式が定着すれば、半導体や重要鉱物加工にも波及する可能性がある。産業政策と安全保障の両立策が問われると評価する。

編集部からの問いを示す。安全保障上の危険と技術獲得の利益を分ける基準はどこにあるのだろうか。情報遮断や取締役構成で危険を十分に抑えられるのだろうか。中国技術への依存が一時的学習か恒常的従属かを見分ける指標が必要ではないだろうか。

参考

よくある質問

フォードとCATLの協力はどのような枠組みか
ミシガン州の電池工場はフォードが完全に所有し運営する。CATLは技術の使用許諾を提供する立場にとどまる。所有権を移さずに製造知見を導入する方式である。
ブライアン・ディース氏は何を提案したのか
外資審査を危険評価だけでなく利益評価も含めて改革すべきだと主張した。同盟国向け審査の簡素化と、注目国向けの条件付き承認経路の創設を求めた。情報遮断や米国人主導を条件とする。
米国が外国技術を活用した過去の事例は何か
1802年創設のデュポン社によるフランス火薬技術の導入がある。1980年代にはGMとトヨタがフリーモント工場で日本の製造方式を導入した。いずれも国内産業の強化につながった。
出典: 虎嗅网

コメント

← トップへ戻る