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1980年代のMF10フィルタICを顕微鏡で解剖

Harris製HF-10のダイを顕微鏡で解析し、72個の容量とCMOS開閉器によるMF10互換フィルタの内部構造を解明した。

7分で読める SINGULISM 編集チームが確認・編集

1980年代のMF10フィルタICを顕微鏡で解剖
Photo by Brian Kostiuk on Unsplash

1980年代のアナログフィルタICの内部構造が、顕微鏡によるダイ解析で明らかになった。 対象はHarris製とみられる謎のICで、ダイ上の刻印からMF10互換のスイッチトキャパシタフィルタと判明した。 Lobstersのrighto.com via calvinの報道では、容量素子の配列と増幅器設定が詳細に記録されている。 現物の特定から開封、顕微鏡観察に至る過程は、アナログ集積回路の設計思想を示す資料である。

Sometimes it’s easier to identify an IC with a microscope.

上記は原著者が示した着眼点である。 型番検索で解決しない部品に対し、顕微鏡観察が有効な手段になった。

謎の型番F1-10-5の正体判明

発端は旧型ICの整理作業だった。 CuriousMarcと呼ばれる収集家が、Harris製の「F1-10-5」と記されたICを発見した。 資料集に該当型番の記載はなかった。 識別不能なICは利用価値が低いため、同氏は解析者に試料を提供した。 パッケージはセラミック封止であり、たがねの一撃で開封できた。 ダイ表面には方形の容量素子が格子状に並んでいた。 この特徴から、スイッチトキャパシタフィルタである可能性が浮上した。 ダイ上の刻印は「HF-10」であった。 この情報を手がかりに、Harris版MF10であることが確認された。 MF10はNational Semiconductorが1981年に導入した汎用フィルタICである。 1チップに2系統の可変フィルタを備える点が特徴である。

セラミック開封と顕微鏡観察の手順

セラミックパッケージは開封性に優れる。 今回も機械的な打撃でダイを露出できた。 顕微鏡像では白色の配線が金属層を示す。 その下層に2層の多結晶シリコンが赤みを帯びて見える。 最下層の灰色部分がシリコン基板である。 チップの上半分と下半分はほぼ鏡像関係にある。 2系統のフィルタを対称設定した結果である。 ダイ周囲には20本の極細接続線が確認された。 20端子パッケージの各端子とダイを接続する構成である。 制御回路はダイ左側に集約されていた。 クロックの水準変換や波形整形を担う部分である。 周波数比の処理や始動回路も同領域に設定された。 他回路に定電流を供給する電流源も含まれる。

72個の容量配列が示す回路構造

ダイ中央の赤みを帯びた方形群が容量配列である。 多結晶シリコンで構成された微小容量が72個並ぶ。 その上方にはCMOS開閉器が設定された。 時計信号の周波数で導通と遮断を繰り返す。 容量の出し入れにより等価抵抗を実現する仕組みである。 各フィルタは3個の演算増幅器を用いる。 赤枠で示された領域が該当部分である。 右側には3系統の出力が並ぶ。 高域用、帯域用、低域用の出力である。 外付け抵抗数個で特性を定められる設計である。 低域や帯域や高域の動作を切り替えられる。 解析で得た測定値の整理には表計算の配列操作が有効であり、Excel動的配列FILTER・SORT・UNIQUEの使い方と実務活用で解説された手法が応用できる。 ダイ上の装飾図形も確認された。 Harrisの標章とフロリダ州の輪郭である。 Harrisはフロリダ州メルボルンに本拠を置いた。 設計者の頭文字とみられる刻印も残る。

スイッチトキャパシタの動作原理

スイッチトキャパシタ回路は抵抗を置き換える手法である。 2個の開閉器が時計信号で交互に閉じる。 電荷の移動量が電流に相当する。 容量値と時計周波数で等価抵抗値が定まる。 集積化に適する理由はここにある。 高精度抵抗の形成は集積回路で難しい。 容量比の精度は比較的確保しやすい。 時計周波数で特性を制御できる利点もある。 1980年代に単一チップのフィルタが普及した背景である。 使いやすさと性能の両立が評価された。 外部部品点数の削減にも寄与した。 アナログ信号処理の省面積化を促した技術である。

MF10互換品としての位置付け

MF10は汎用性の高さで知られる。 各フィルタは低域や帯域や高域として動作する。 外付け抵抗で中心周波数や選択度を設定する。 HarrisのHF-10はこの互換品に当たる。 表示の「F1-10-5」は1985年の日付符号を伴う。 「FI-10-5」と読める可能性も残る。 いずれにせよ出自は共通の設計系統である。 当時は複数社が第二供給源として互換品を供給した。 設計資産の継承を示す事例である。 旧型品の再評価は保守や教育にも資する。 生産終了品の代替検討にも手がかりを与える。

編集部の見解

短期的影響について記す。今回の解析は旧型アナログICへの関心を高めると見る。大学や高専の回路教育でスイッチトキャパシタが再び題材になると評価する。中古市場でのMF10系部品の問い合わせは増えると見る。保守用途の在庫確認や代替品選定が進む可能性がある。測定器や音響機器の修理現場で資料価値が生まれると評価する。

長期的視点について記す。アナログとデジタルの融合設計は今後も続くと見る。時計で特性を定める手法はプログラム可能なアナログの原型と評価する。ダイ上の装飾や頭文字は設計文化の記録と見る。こうした解析の蓄積は技術継承に寄与すると評価する。半導体史の一次資料として保存意義があると見る。

編集部からの問いを記す。旧型ICの解析知見を現行設計にどう生かすべきだろうか。容量比精度への依存は微細化時代にも有効だろうか。開封解析と非破壊検査の使い分けはどうあるべきだろうか。技術継承の観点で記録すべき情報は何だろうか。読者の現場での経験が問われていると見る。

参考

よくある質問

MF10とは何か
National Semiconductorが1981年に導入した汎用スイッチトキャパシタフィルタである。1チップに2系統のフィルタを備え、低域や帯域や高域として動作する。外付け抵抗で特性を設定できる点が特徴である。
スイッチトキャパシタ回路の利点は何か
容量と開閉器の組み合わせで等価抵抗を実現する方式である。集積化が難しい高精度抵抗を不要にできる。容量比と時計周波数で特性を定められるため、単一チップ化に適する。
今回の解析で判明したHarris製ICの正体は何か
外形表示はF1-10-5で、ダイ刻印はHF-10であった。顕微鏡像の72個の容量や演算増幅器設定から、MF10の互換品と確認された。1985年の日付符号を持ち、第二供給源の製品とみられる。
出典: Lobsters

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