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GMが電池工場株を売却、開発に9億ドル集中

GMがSamsung SDI合弁の持ち分を売却し電池工場から撤退する一方、約9億ドルを研究開発に投じる戦略転換が明らかになった。

11分で読める SINGULISM 編集チームが確認・編集

GMが電池工場株を売却、開発に9億ドル集中
Photo by CHUTTERSNAP on Unsplash

2026年8月11日、Samsung SDIは合弁会社Synergy CellsにおいてGMが保有する49.99%の株式をすべて取得し、インディアナ州ニューカーライルの電池工場計画を全面的に引き継ぐと発表した。虎嗅網 の 汽車商業評論 の報道では、この案件はGMにとって2年足らずで2度目となる計画中のセル工場持ち分売却であると伝えた。2024年12月にはミシガン州ランシングの未稼働工場の権益をLGエナジーソリューションに売却していた。今回は建設中のニューカーライル計画からの撤退である。一方でGMはセル生産能力への投資を縮小しつつ、次世代セル研究開発への投資を積み増している。総額9億ドル近い研究開発施設群の整備がその中核である。

GMが移転させたいのは生産能力リスクであり、電池技術ではない

上記の一文は今回の戦略転換の本質を示している。生産資産を持たずに技術の定義権を握る方向へ軸足が移っている。

サムスンSDIへの持ち分譲渡の全容

Synergy CellsはGMとSamsung SDIによる合弁計画であった。両社は2023年に提携を発表し、2024年に合弁案を正式決定した。約35億ドルを投じて年産27GWh、将来は36GWhまで拡張可能な角形セル工場を建設する内容であった。生産対象は主に高ニッケル電池とされた。電気自動車需要の急増に備え、セル供給を確保する狙いがあった。自動車メーカーが資金と車両基盤と長期受注を出し、電池企業が材料配合と工程と量産経験を出す分担であった。

変調は2026年5月に表面化した。施工中の工場は設備据え付けを中断した。建屋の外殻のみが完成し、現場は封鎖された。GMの説明は生産能力を現在の需要に適合させるという内容であった。3カ月後に中断は撤退に変わった。Samsung SDIは同工場を北米初の単独運営電池生産拠点と位置づけた。完成後はまず蓄電池を生産する方針である。同時にSamsung SDIはGMと将来の電気自動車向け次世代角形セルの共同開発協定を締結した。関連製品を同工場で生産する可能性がある。化学システムはまだ公表されていない。GMとLGエナジーソリューションが進めるLMR角形セルとは別の確定済み計画ではない。持ち分売却は技術提携の終了を意味しない。GMは株主としての建設と運営投資の負担を外した。それでも次世代角形セルの開発には参画を続ける。

ランシング工場売却の経緯と転用

GMの電池製造の歴史はUltium体系より早い。ミシガン州Brownstown電池工場は2009年に稼働した。2010年初めからシボレーVolt向け電池パックの量産を担った。当時のセルは旧LG化学が供給した。GMは電池パックと関連装置の組み立てを担当した。LGエナジーソリューションは2020年にLG化学から分社化した。その後もGMの最重要セル供給相手の一つである。現在もBrownstownはCorvette E-Ray用電動駆動装置と電池パック、キャデラックCELESTIQの電池パックを生産する。一部の試作製造も担う。セルは専業供給者が提供し、自動車メーカーが電池パックと熱管理と制御装置と車両統合を握る方式であった。

純電気自動車時代に入りGMの目標は拡大した。2019年以降、GMはLGエナジーソリューションと折半出資のUltium Cellsを主体に3工場を設定した。1カ所目はオハイオ州ウォーレンである。2カ所目はテネシー州スプリングヒルである。3カ所目はミシガン州ランシングである。ミシガン州の電気自動車と電池計画だけでもGMは70億ドルの投資を計画した。2025年末までに北米で年産100万台の純電気自動車生産能力の形成を掲げた。セル生産能力の先行確保は参入の必須条件とみなされた。成熟したセル製造技術は日中韓の電池企業が握っていた。外部調達の継続では需要急増時に供給不足と交渉力低下を招く懸念があった。

転換点は2024年末に訪れた。2024年12月、GMはランシングUltium Cells工場の全権益をLGエナジーソリューションに売却した。約10億ドルの先行投資を回収する見込みと発表した。総額26億ドルを計画した第3工場はGMの資産構成から切り離された。引き継いだLGエナジーソリューションは工場の製品と顧客を再編した。2026年8月にランシング工場は生産を開始した。トヨタの電気自動車を含む自動車顧客向け製品と蓄電池事業を展開する。当初GM需要を中心に計画された生産能力は複数顧客と複数市場に供給する拠点に変わった。2度の売却後もGMはウォーレンとスプリングヒルの稼働済み2工場の権益を保有する。Brownstown電池パック工場の運営も続ける。設定は全面拡大から選択的保有へ転換した。

約9億ドル投じた研究開発体制強化

生産能力投資の縮小と対照的に研究開発投資は拡大した。GM世界技術センターに隣接する2施設が中核である。すでに稼働中のウォレス電池セルイノベーションセンターがある。建設中のアンカー・ジョンソン電池セル開発センターがある。合計で9億ドル近い電池研究開発施設群を構成している。虎嗅網 の 汽車商業評論 の取材内容として施設の分担が示された。

ウォレスセンターは材料と化学システムとセル形態と大型試作の開発を担当する。アンカー・ジョンソンセンターは量産段階に近い設計と製造検証を担う。実験室試作と大規模生産の間の空白を埋める役割である。後者は物理学者でGM初の女性副社長であるBetsey Ancker-Johnsonにちなんで命名された。GMは同センター稼働後、新電池の開発期間を最大1年短縮できると見込む。狙いは共同開発における発言力の強化である。化学システムとセル形状と性能指標と製造工程の確定過程に早期から関与する体制である。要求を提示して完成品を調達する顧客から次世代セルの共同定義者への転換が掲げられた。

LMRセルとナトリウムイオン戦略

技術主導権を測る重要計画がLMRセルである。GMとLGエナジーソリューションが共同開発するリチウムリッチマンガン系角形セルである。2028年の量産を計画する。累計約140万マイル相当の試験を完了した。社内でのフルサイズ試作製造と検証能力を通じた開発である。受動的な調達者からセルの共同定義者への転換を示す事例である。材料と電解液と界面工学で特許を保有するとされる。基幹材料特許と大規模製造経験ではLGエナジーソリューションとSamsung SDIへの依存が続く。研究開発力が安定した量産歩留まりと費用優位に転換できるかが焦点である。真価が問われるのは2028年のLMR量産時である。

もう一つの柱がナトリウムイオンである。2026年にはGMは米蓄電企業Peak Energyとナトリウムイオンセルを共同開発する。公表された提携形態ではGMがセル開発を担う。独占的製造権を保持する。Peak Energyは電力網とデータセンター向け蓄電装置への統合を担う。製品は電力網向け蓄電など定置用途を想定する。エネルギー密度を重視しない用途である。専用工場建設の危険を負わない方式である。研究開発を担い製造権を保持する選択的製造の新モデルである。電池工場持ち分を売却しながら新型セルの製造権まで保持する点は一見相反する。実際には専用セル生産能力を縮小しつつ材料研究と試作製造と生産検証能力を補強する動きである。専業電池企業なしに次世代セルの開発と量産を単独で完結させることはできない。それでも技術決定の初期段階から関与する意図である。

量産能力の壁と技術主導権の課題

セル製造は典型的な重資産事業である。年産30GWh前後の一工場でも巨額の固定費が発生する。稼働率の低下は直接採算悪化につながる。GMが電池工場持ち分を売却した直接の原因は稼働率である。米国の純電気自動車販売の低迷と稼働率の深刻な不足が背景にある。需要見通しを超える生産能力の保有は負担になる。資金と車両基盤を提供しても需要が伴わなければ回収は難しい。合弁工場建設は需要急増を前提とした選択肢であった。前提が崩れた段階で資産構成の見直しは避けられない。

売却後のGMは生産資産を絞った。技術資産の蓄積は続ける。材料研究と試作と検証を社内に持つことで電池企業との交渉条件を変える狙いである。化学システムの選定と工程の確定に影響力を持つ立場である。ただし量産能力の壁は残る。大規模製造の経験と歩留まり管理は専業企業の領域である。安定供給と費用競争力の確保には外部連携が不可欠である。技術主導権の主張が量産現場で裏付けられるかが今後の焦点である。

編集部の見解

短期的影響について記す。今後3〜6ヶ月では米国内の電池工場再編が加速すると見る。Samsung SDIはニューカーライル工場を蓄電池生産に転用する方針である。LGエナジーソリューションもランシング工場で複数顧客向け供給を広げる。GMの設備投資負担は軽くなる。浮いた資源は研究開発施設の立ち上げに振り向けられると見る。セル調達先の多様化と蓄電池市場の需給にも波及する。 長期的視点について記す。1〜3年では自動車メーカーと電池専業企業の分担が再定義されると見る。重資産の量産は専業企業が担う。自動車メーカーは材料と形状と工程の定義に集中する。GMのLMR計画は2028年量産が試金石になると評価する。社内試作と検証能力が歩留まり改善に寄与するかが鍵である。定置用ナトリウムイオンの成果も供給網の選択肢を広げる可能性がある。 編集部からの問いを記す。技術定義権は量産現場の経験なしに維持できるのだろうか。特許と試作能力は交渉力を高める材料になる。安定した品質と費用を実現する主体は依然として電池企業である。GM方式は他社にも広がるのだろうか。生産能力危険の外部化と技術関与の両立は容易ではない。

参考

よくある質問

GMはなぜ2つの電池工場の持ち分を売却したのか
直接の理由は米国の純電気自動車販売の低迷と稼働率不足である。重資産のセル工場は固定費が大きく、低稼働では採算が悪化する。GMは建設と運営投資の負担を外し、生産能力危険を電池専業企業に移した。一方で技術開発への関与は続けている。
約9億ドルの研究開発施設群の役割は何か
ウォレス電池セルイノベーションセンターが材料と化学システムと大型試作を担う。アンカー・ジョンソン電池セル開発センターが量産に近い設計と製造検証を担う。実験室と大量生産の間を埋め、新電池の開発期間を最大1年短縮する狙いである。
LMRセルとナトリウムイオン電池の位置づけは
LMRはGMとLGエナジーソリューションが共同開発するリチウムリッチマンガン系角形セルで2028年量産を計画する。ナトリウムイオンはPeak Energyとの共同開発で電力網やデータセンター向け定置用途を想定する。GMは開発を担い独占的製造権を保持するが専用工場は持たない。
出典: 虎嗅网

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