開発

SteamのLinux版が64ビット化、i686ライブラリ依存を脱却

ValveがSteamクライアントのLinux版ベータを公開し、本体を64ビット化した。Steam Runtimeコンテナ内での動作も始まり、ディストリビューション間の体験が統一される。

7分で読める SINGULISM 編集チームが確認・編集

SteamのLinux版が64ビット化、i686ライブラリ依存を脱却
Photo by Bernd 📷 Dittrich on Unsplash

Valveは2026年10月15日、Steamクライアントのベータ版を公開した。このうちLinux向けクライアントが64ビットアプリケーションとなった。PhoronixのMichael Larabelの報道によれば、長年32ビット(i686)ライブラリに依存してきたLinux版Steamが、その制約から外れることになる。

何が変わったのか

今回のベータで最大の変更点は、Linux向けSteamクライアントのバイナリが64ビット化されたことだ。これまでLinux版Steamは32ビットバイナリとして提供され、動作にはi686アーキテクチャ向けのライブラリ群が必要だった。

PhoronixのMichael Larabelは今回の変更の意義を次のように伝えている。

The Steam Linux client was one of the few remaining holdouts for many Linux enthusiasts/gamers to still be relying on i686 libraries on their system.

(日本語訳:SteamのLinuxクライアントは、多くのLinux愛好家やゲーマーがシステム上でi686ライブラリに依存し続ける、数少ない残存要因の一つだった。)

主要ディストリビューションは64ビット環境を標準とし、32ビットライブラリの提供を段階的に縮小している。その中でSteamがi686ライブラリを必要とする代表例であり続けたことは、Linuxデスクトップにおける長年の課題だったと評価できる。

Steam Runtimeコンテナ内での動作

もう一つの変更点は、Steamクライアント自体がSteam Runtimeコンテナ内で動作するようになったことだ。Steam Runtimeは、Linux上でゲームを動かす際に共通のライブラリ環境を提供する仕組みである。

クライアントがこのコンテナ内で動くことで、複数のディストリビューション間で一貫した体験が得られる。ゲームが利用するRuntimeとクライアントが利用するRuntimeが同一になるため、依存関係の差異に起因する不具合が減るとみられる。

Valveは今回の変更の意図として、ゲームと同じSteam Runtimeを活用し、複数ディストリビューションでより一貫した体験を提供することを挙げている。ディストリビューションごとの差異を吸収する方針は、Linuxゲーミングの安定性を高める方向に働く。

SteamRT3ベータからの流れ

今回の64ビット化は突然の変更ではない。2026年前半に実施されたSteamRT3ベータが、64ビット化とSteam Runtimeコンテナ内での実行に向けた準備を進めていた。段階的な移行の最終段階として、今回のベータが位置づけられる。

SteamRTはValveが提供するランタイム環境で、ゲームの動作に必要な共通ライブラリをまとめたものだ。バージョン3への移行は、より新しいライブラリ基盤への切り替えを意味する。64ビット化とコンテナ化は、その延長線上にある設計判断である。

Linuxゲーミングへの影響

Linux版Steamが64ビット化されたことで、ユーザーはi686ライブラリを必ずしも導入せずに済むようになる。32ビットライブラリの提供を終了したディストリビューションでは、これまでSteamが利用の障壁となる場合があった。この障壁が下がる意義は小さくない。

自作PCでLinuxをゲーム用途に使う例は増えている。DIY自作Steam Machine、光ファイバーHDMIとBazziteで実現 のように、ゲーム向けディストリビューションを導入する事例も報告されている。クライアントの64ビット化は、こうした環境の構築を容易にする方向に作用する。

カーネル側の対応も並行して進む。Nova Lake S、Linux 7.3でGPU ID7種に では、新しいGPUの識別子がカーネルに追加された。ハードウェア対応とクライアント側の近代化が同時に進むことで、Linuxゲーミングの基盤は着実に整いつつある。

残る課題

64ビット化は前進だが、すべての問題が解決するわけではない。古い32ビット限定のゲームやツールが残る限り、一部のユーザーは32ビット対応ライブラリを維持する必要がある。

また、Steam Runtimeコンテナへの移行は、特殊な環境で動作させているユーザーに一時的な影響を与える可能性がある。ベータ版であるため、安定版への反映時期は明らかにされていない。変更点の全容はSteamのコミュニティページで公開されている。

編集部の見解

今後3〜6ヶ月で、Linuxディストリビューションの32ビットライブラリ削減が加速する可能性がある。Steamが最後の砦となっていた環境では、移行を先送りする理由が減るためだ。ベータから安定版への反映時期と、移行に伴う不具合の有無が当面の焦点となる。

1〜3年の視点では、Linuxゲーミングの参入障壁が下がると見る。クライアントとゲームが同じRuntime基盤を共有すれば、ディストリビューション側も64ビット前提の設計へ統一しやすくなる。携帯型ゲーム機やSteamOSとの連携も進み、対応環境の裾野が広がる可能性がある。

一方で、32ビット資産の扱いは未解決のままだ。古いゲームの互換性を誰がどう支えるのかという論点が残る。Valveの方針が他社のゲーム配信基盤やパッケージ管理に波及するかどうかも、注視に値すると考える。

参考

よくある質問

SteamのLinux版が64ビット化されると何が変わるのか
Linux版Steamが32ビットのi686ライブラリを必要としなくなる。32ビットライブラリの提供を終了したディストリビューションでも導入しやすくなり、クライアントとゲームが同じSteam Runtimeを共有するため依存関係の差異による不具合が減るとみられる。
Steam Runtimeコンテナとは何か
Valveが提供するLinux向けの共通ランタイム環境である。ゲームの動作に必要なライブラリをまとめて提供し、ディストリビューション間の差異を吸収する。今回のベータでは、Steamクライアント自体もこのコンテナ内で動作するようになった。
ベータ版はいつ安定版になるのか
安定版への反映時期は明らかにされていない。2026年前半のSteamRT3ベータを経て今回のベータに至っており、検証を重ねたうえで段階的に展開されるとみられる。
出典: Phoronix

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