ガジェット

USB PDとは仕組みとGaN充電器ケーブルの選び方

USB PDの仕組みと規格、GaN充電器とUSB-Cケーブルの選び方を現場視点で解説する。

9分で読める SINGULISM 編集チームが確認・編集

USB PDとは仕組みとGaN充電器ケーブルの選び方
Photo by Mika Baumeister on Unsplash

USB PDとは

USB PDはUSB Power Deliveryの略称である。 USB-IFが策定した給電規格だ。 データ通信用のUSBを電力供給にも使う仕組みである。 従来のUSB給電は5V中心で出力が小さかった。 USB PDでは最大240Wまで供給できる。 スマートフォンからノートパソコンまで対象が広い。 携帯機器の充電規格として事実上の標準である。 USB-IFの公式情報 (https://www.usb.org/usb-power-delivery) でも仕様が公開されている。

仕組み ネゴシエーションとPDO

USB PDの核心は機器間の交渉にある。 接続直後は5Vの安全な電圧で開始する。 その後CC線を用いて能力を通知し合う。 充電器側はPDOと呼ぶ電圧電流表を提示する。 受電側は希望するPDOを選択して要求する。 合意が成立した後に高電圧へ切り替わる。 合意なき高電圧印加は行われない。 この手順が機器破損を防ぐ仕組みだ。 通信はUSB-CコネクタのCCピンを使う。 従来のUSB-AではPD交渉は成立しない。 PD利用には両端USB-Cが基本である。 例外として片端USB-Cの変換用途も存在する。 出力安定性では両端USB-Cが確実だ。

PDOの例は以下の通りだ。

  • 5V 3A: 小型機器や初期交渉用
  • 9V 3A: スマートフォンの急速充電用
  • 12V 3A: タブレットや小型周辺機器用
  • 15V 3A: モバイルパソコンの中出力用
  • 20V 5A: 高性能ノートパソコン用 機器は対応PDOの中から最適値を選ぶ。 充電器のPDOが多いほど互換性は高い。 PDO不足では低速充電に留まる場合がある。

規格の変遷 SPRとEPR、PPS

USB PD 2.0で100Wまでの枠組みが整った。 USB PD 3.0で機器連携と細分化が進んだ。 現行の主流はUSB PD 3.1である。 3.1ではSPRとEPRの二区分が設けられた。 SPRは最大20V 5Aで100Wまでの範囲だ。 EPRは28Vや36Vや48Vを追加する。 EPRの上限は48V 5Aで240Wである。 高出力ノートパソコンや作業站が対象だ。 USB-IFの仕様文書 (https://www.usb.org/document-library/usb-power-delivery) に定義がある。

PPSは電圧を細かく可変する機能だ。 3.3Vから21Vまで20mV刻みで調整する。 発熱抑制と電池寿命保護に役立つ。 韓国や米国の一部スマートフォンで必須だ。 Samsungの超急速充電はPPSに依存する。 Google Pixelの急速充電もPPSを使う。 PPS非対応充電器では出力が伸びない。 AVSはPPSを拡張した可変仕様である。 対応可否は製品仕様表の記載で確認する。

出力の目安 機器別の必要電力

機器ごとに必要な電力は異なる。 目安を把握すると選定が容易だ。

  • ワイヤレスイヤホンや腕時計: 5Wから15W
  • スマートフォン: 18Wから45W
  • タブレット: 20Wから45W
  • 薄型ノートパソコン: 45Wから65W
  • 高性能ノートパソコン: 65Wから140W
  • 携帯ゲーム機: 39Wから65W 実消費電力よりPDO一致が重要だ。 20V対応機器に65W充電器が適する例がある。 15V止まりの充電器では全速にならない。 受電側の要求電圧の確認が欠かせない。

GaN充電器の選び方

GaNは窒化ガリウムを用いた半導体だ。 従来のシリコンより損失が少ない。 高周波動作に適し部品を小型化できる。 同出力でも筐体が小さく発熱が抑えられる。 複数ポート搭載製品と相性が良い。 選定では以下の観点が有効だ。

  • 単一ポート時の最大出力
  • 複数ポート同時使用時の配分
  • 対応PDOとPPSの範囲
  • 筐体寸法とプラグ形状
  • 温度制御や保護回路の有無 単一ポート65W表示でも同時使用で45Wに低下する例がある。 合計出力と各ポート出力は別物だ。 製品頁の出力配分表の確認が必要だ。 折りたたみ式プラグは携帯性に優れる。 据え置き用途では固定プラグが安定する。 機上での放熱空間も確保したい。 密閉空間での連続高負荷は避けるべきだ。

現場での使い分け例を示す。

  • 出張用: 65W級の小型2ポート品
  • 自宅据え置き用: 100W以上の多ポート品
  • 高性能機用: 140W級のEPR対応品 140W受電のMacBook ProはPD 3.1対応が必要だ。 Appleの技術文書 (https://support.apple.com/ja-jp/HT212575) でも140W給電条件が示されている。 機器指定の充電器出力の確認が確実だ。

USB-Cケーブルの選び方

ケーブルも出力に直接関与する。 内部のeMarkerが能力を申告する。 eMarkerはケーブル内蔵の識別素子だ。 充電器と機器はeMarker情報も参照する。 能力不足のケーブルでは出力が制限される。 区分は以下の通りだ。

  • 60Wまで: 3A対応品
  • 100Wまで: 5A対応品でeMarker搭載
  • 240Wまで: EPR対応品でeMarker搭載 240W充電にはEPR対応ケーブルの使用が必須だ。 100W用ケーブルでは240W交渉は成立しない。 長さが長いほど電圧降下が増える。 2m超では発熱と損失に注意する。 給電専用の太径品は取り回しが重い。 携帯用は1m前後の100W品が扱いやすい。

通信性能と給電性能は別指標だ。 USB 2.0対応でも100W給電可能な品がある。 映像出力にはUSB4やThunderbolt対応が必要だ。 充電専用では通信規格は問われない。 被覆の耐久性も確認したい。 シリコン被覆は柔軟で絡みにくい。 ナイロン編組は摩耗に強い。 断線時は高負荷用途から外す運用が安全だ。

安全利用と互換性の注意点

USB PDは交渉機構により安全性が高い。 それでも運用上の注意が存在する。 発熱は出力低下や停止の原因になる。 充電器とケーブルの接触不良は発熱を招く。 ほこりの堆積した電源回りは清掃する。 規格外の安価品は避けるべきだ。 USB-IF認証品は相互運用性試験を経ている。 認証ロゴの有無は一つの判断材料だ。 PSE表示のある国内向け品を選ぶ。 海外並行品ではプラグ形状が異なる場合がある。 変換 adapter の連続使用は接触抵抗を増やす。 据え置きでは直接接続が安定する。 航空機内や車内電源では供給上限が低い。 受電側が要求を下げて動作する例がある。

編集部の見解

編集部は定格出力の数値よりPDOとPPSの対応範囲を重視すべきと見る。ノートパソコン用には65W以上とPPS対応が判断基準になると評価する。単一ポート時の最大出力と複数ポート同時使用時の配分も確認対象になると言えそうだ。 現場での落とし穴はケーブルと充電器の組み合わせ不一致にあると見る。240W対応充電器でも識別素子非搭載ケーブルでは出力が制限されると評価する。発熱による出力低下や機上の放熱条件も見落とされがちだと言えそうだ。 今後の方向性はPD 3.1 EPRの普及と高出力の小型化にあると見る。ノートパソコンや周辺機器のUSB-C給電一本化が進むと評価する。次世代半導体の採用で140W級が携帯用途の標準になると言えそうだ。

参考

よくある質問

USB PD対応か見分ける方法はあるか
充電器と機器の仕様表でUSB PDやPD 3.0やPD 3.1の記載を確認する。PDO一覧に9Vや15Vや20VがあればPD対応である。ケーブルはeMarker搭載と最大電流の表示が目安だ。
GaN充電器は何が違うのか
窒化ガリウム素子により電力損失が少なく小型化しやすい。同じ65Wでも従来品より筐体が小さく発熱が抑えられる。多ポート製品でも各ポートの出力維持に有利だ。
100W充電器でスマートフォンを充電しても問題ないか
問題はない。USB PDは機器間の交渉で適切な電圧と電流を決める。充電器の最大値が大きくても機器の要求以上には流れない。PDOに適合範囲があれば低速化も起きない。
240W充電に必要な条件は何か
充電器とケーブルと機器の三者がEPRに対応する必要がある。ケーブルは240W対応と明記された品を使う。PDOに28V以上の記載があるかが判断材料だ。
出典: Singulism

コメント

← トップへ戻る