AI

Rabbit、R1不要のOS3公開 クラウド自律OSで再起図る

RabbitがR1不要の自律型OS「OS3」を発表。Windows/Mac/Linuxで動作し、5台連携やモデル選択に対応するクラウド基盤を投入した。

12分で読める SINGULISM 編集チームが確認・編集

Rabbit、R1不要のOS3公開 クラウド自律OSで再起図る
Photo by Numan Ali on Unsplash

Rabbitがハードウェアへの依存から脱却する方針を打ち出した。同社は2026年9月22日、専用端末R1を必要としない自律型AIエージェント「OS3」を発表した。The VergeのEmma Rothの報道では、この新基盤は「agentic operating system」と位置付けられている。クラウドで動作しつつ、Windows、Mac、Linuxの各端末で局所的に操作を実行する設計が特徴だ。

同社はこれまで、CES 2024で披露した手のひらサイズのAI端末R1で注目を集めた。Large Action Modelによる操作自動化を掲げたが、発売後の評価は厳しいものだった。今回のOS3は、その反省を踏まえたソフトウェア中心への転換と見ることができる。

R1不要の自律型OS投入の狙い

OS3の最大の変更点は、R1という専用機器を前提としない点にある。The VergeのEmma Rothの報道によれば、RabbitはWiredの先行報道を引用する形で、OS3がR1なしで利用可能な独立したAIエージェントであると説明した。

従来のR1は、端末自体がAIエージェントの実行環境だった。OS3では実行環境をクラウドに移し、利用者の既存端末を操作対象とする。専用機器の購入を不要にすることで、導入障壁を下げ、利用者層の拡大を図る狙いがあると評価できる。

同社はOS3を「agentic operating system」と呼称する。単一のチャット応答ではなく、複数段階の作業を自律的に遂行する点が強調されている。ファイル操作やアプリケーション連携を含む一連の作業を、利用者の指示を起点に完結させる構想だ。

Rabbit, the company behind the underwhelming R1 device, is rolling out a standalone AI agent that you don’t need its hardware to use, as reported earlier by Wired. The startup says its new OS3 “agentic operating system” runs in the cloud but operates locally across Windows, Mac, and Linux devices.

この記述は、クラウドでの推論と端末側での実行を組み合わせる混成構造を示す。処理の中枢はクラウドに置きつつ、実際の操作は利用者の端末上で行う。これにより、端末に保存された資料や各アプリケーションへのアクセスが可能になる。

クラウドと端末を跨ぐ実行基盤の構造

OS3はクラウドで動作するが、操作はWindows、Mac、Linuxの各端末で局所的に実行される。The Vergeの記事によれば、同社はこの方式を「runs in the cloud but operates locally」と表現している。クラウド側で計画と推論を担い、端末側で具体的な操作を担う分担だ。

利用者は1つのアカウントに最大5台の端末を登録できる。登録された端末間でOS3が作業を分散し、必要な機器を自動的に選択する。例えば、文書作成はノートPC、画像処理は高性能なデスクトップといった使い分けを、OS3側が判断する仕組みとされる。

アクセス経路は多岐にわたる。専用のデスクトップサイトに加え、TelegramやiMessageといったメッセージングアプリを経由した指示も可能だ。従来のR1端末からも引き続き利用できる。利用者が日常的に使う連絡手段から直接指示を出せる点は、エージェントの定着を左右する要素と見ることができる。

タスク実行時、OS3は必要な端末、ファイル、アプリケーション、AIモデルを自動的に特定する。利用者が個別に環境を指定する必要はない。複数の資料を横断して情報を収集し、適切なアプリケーションを呼び出し、結果を統合する一連の流れを自律的に担う。

この設計は、近年のAIエージェントが目指す「環境横断的な自律実行」に合致する。AI向けGit基盤Agentgit登場 匿名で即時共有で報じられたような、エージェント同士の連携や即時共有を前提とする開発基盤の広がりとも親和性が高い。OS3が端末とクラウドを跨ぐことで、エージェントの作業領域は単一端末の内部に留まらなくなる。

5台連携とモデル選択を支える仕組み

OS3では、利用者が好みのAIモデルを登録できる。単一のモデルに固定せず、用途に応じて使い分ける構成だ。具体的なモデル名や対応数は明らかにされていないが、利用者側で選択肢を持てる点は重要である。

タスクの内容に応じて、OS3が最適なモデルを自動選択する。文書要約やコード生成、画像解析など、処理特性の異なる作業で異なるモデルを呼び出すことが想定される。モデル間の切り替えをOS3が吸収することで、利用者はモデル選択の複雑さから解放される。

5台までの端末登録は、個人の複数端末利用を想定した上限と見られる。職場のPC、自宅のPC、ノートPCといった分散環境を1つのエージェントが束ねる。ファイルの所在をOS3が把握し、必要な資料を適切な端末から取得する。

この仕組みは、クラウドと端末の境界を曖昧にする。データは端末側に残しつつ、制御はクラウド側が担う。利便性と引き換えに、端末へのアクセス権限を広く委任する必要がある。権限設計や操作履歴の透明性が、企業導入における評価軸になると考えられる。

BAT、Kling AIに30億ドル出資 反ByteDance連合の実像が示すように、AI基盤を巡る競争は巨大資本の集中と分散化が同時に進む。Rabbitのように、特定モデルに依存せず複数のモデルを束ねるアプローチは、特定陣営への固定化を避ける選択肢として位置付けられると評価できる。

R1製造停止と次世代サイバーデッキ構想

Rabbitの創業者Jesse Lyu氏は、Wiredの取材に対し、R1端末の製造を停止したと語ったとされる。The Vergeの報道もこの点を引用している。R1への新規投資を止め、資源をOS3へ集中させる判断だ。

一方で、同社はハードウェア事業から完全に撤退するわけではない。次の機器として、OS3を搭載する「cyberdeck」を開発中であると説明している。Wiredによれば、発売は「数カ月以内」とされる。詳細な仕様や価格は公表されていない。

cyberdeckという呼称は、キーボードと画面を備えた可搬型の開発機を示すことが多い。Rabbitはこれを「vibe-coding」向けと位置付けている。vibe-codingは、自然言語による指示を中心に、雰囲気や意図を伝えながらコードを生成させる開発手法を指す。OS3の自律実行能力と組み合わせ、端末上で直接開発作業を完結させる狙いがあると見られる。

R1は発売当初、AIハードウェアの新たな形態として注目された。しかし、応答速度や機能の限定性、スマートフォンとの差別化不足を指摘された。製造停止は、単一用途のAI端末が市場で持続しにくい現実を反映した判断と評価できる。

OS3への移行は、ハードウェアの失敗をソフトウェアで補完する典型的な再起策だ。既存のPCやMacを活用することで、利用者は新たな機器を購入せずに同社のエージェントを試せる。ハードウェア在庫や流通の負担を抱えずに、利用者基盤を拡大できる利点がある。

データ保持を巡る説明と残る論点

RabbitはOS3におけるデータ取り扱いについて、利用者のデータを保存、複製、使用、販売しないと説明している。一方で、チャット内容とそこから派生する記憶は同社のサーバーに保持するとしている。この2つの説明の整合性が、利用者の理解を左右する。

チャットと記憶をサーバーに保持する理由は、文脈の維持やパーソナライズにあるとみられる。過去の対話を参照することで、継続的な作業や好みの反映が可能になる。ただし、保存しないとする対象と、保持するとする対象の境界は明確ではない。

さらに、OS3に連携された外部のAIプロバイダーは、各社のプライバシー規定に従ってデータを取り扱う。Rabbitの規定とは別に、連携先の規定が適用される。利用者は、Rabbitだけでなく、選択したモデル提供者の規定も確認する必要がある。

この構造は、近年のAIエージェントに共通する課題を抱える。端末内のファイルやアプリケーションに広くアクセスするほど、利便性は高まるが、漏えい時の影響範囲も広がる。アクセス権限の最小化や、操作ログの可視化が求められる。

ウェアラブルや小型端末の分野でも、データの取り扱いが信頼を左右している。Oura Ring 5とRingConn Gen 3徹底比較で比較されたような健康データの管理と同様、AIエージェントが扱う業務データや個人ファイルも、長期的な信頼の基盤になる。Rabbitが「販売しない」と明言した点は一つの表明だが、保持期間や削除手段、第三者提供の有無など、運用の詳細が問われる。

OS3の提供形態や料金体系、具体的な対応モデル、企業向け管理機能の有無は、現時点で明らかにされていない。クラウドと端末を跨ぐ実行には、安定したネットワークと端末側エージェントの常駐が前提となる。オフライン時の動作や、端末がスリープ状態にある場合の挙動など、運用面の詳細は今後の検証が必要だ。

編集部の見解

短期的には、R1の製造停止とOS3への転換が、Rabbitの事業継続性を左右する試金石になると見る。専用端末の販売に依存せず、既存のPC資産を活用する方式は、導入障壁を大幅に下げる。3〜6カ月の間に、実際のタスク成功率や応答速度、対応アプリケーションの幅が、利用者の継続判断を決める材料になる。メッセージングアプリ経由の操作がどこまで実用的に機能するかが、初期の評判を形成するだろう。 長期的には、OS3のような端末横断型エージェントが、OSやアプリケーションの境界を再定義する可能性があると評価できる。1〜3年の視点では、特定のAIモデルや特定の端末に固定されない「持ち運べる自律層」が、個人の作業環境の標準になるかが問われる。5台連携やモデル選択の自由が、企業におけるシャドーAIの管理や情報統制の在り方にも影響を与える。利便性と統制の均衡をどう設計するかが、普及の条件になる。 残る問いは、Rabbitが掲げる「保存しない」と「記憶は保持する」の線引きを、利用者が検証可能な形で示せるかである。

参考

よくある質問

RabbitのOS3はR1を持っていなくても使えるのか
利用可能だ。OS3はクラウドで動作しつつWindows、Mac、Linuxの既存端末で局所的に操作を実行する。専用サイトやTelegram、iMessage経由でもアクセスでき、R1は必須ではない。1アカウントで最大5台まで端末を登録できる。
OS3はどのようにタスクを実行するのか
利用者が登録した端末、ファイル、アプリケーション、AIモデルの中から、OS3が必要な要素を自動的に特定して作業を遂行する。利用者が個別に環境を指定する必要はなく、複数の資料やアプリを横断した一連の作業を自律的に完結させる設計と説明されている。
OS3のデータ取り扱いはどうなっているのか
Rabbitはデータを保存、複製、使用、販売しないと説明する一方、チャット内容とそこから派生する記憶は自社サーバーに保持するとしている。連携する外部AIプロバイダーは各社のプライバシー規定に従ってデータを取り扱うため、利用者は各規定を確認する必要がある。
出典: The Verge

コメント

← トップへ戻る