星宇股份が新卒107名退職勧奨、総経理12カ月減俸
星宇股份が新卒107名を退職勧奨し謝罪。総経理12カ月減俸、3カ月手当支給へ。新卒雇用の構造問題が浮き彫りに。
自動車用照明の大手である星宇股份(Xingyu)が、2025年秋の採用で迎えた新卒440名のうち107名に対し、入社からわずか1カ月で退職勧奨を実施した。対象者には補償金の受け取りか現場への設定転換が迫られ、応じなければ採用ブラックリストへの登録が示唆されたとされる。新卒側が顧客企業や香港証券取引所への通報に踏み切ったことで事態は拡大し、同社は謝罪と補償を表明、総経理に対する12カ月分の減俸処分を発表した。虎嗅網 の 酷玩実験室coollabs の報道では、一連の対応が業界トップ企業による前例のない手法として強い反発を招いたと伝えられている。
本記事は 虎嗅網 に基づく(All Rights Reserved)。日本国著作権法32条の公正な引用に依拠する。
Xingyuが新卒440名を採用後、わずか1カ月で理由なく107名に退職勧奨、世論の反発と顧客からの苦情を招き、最終的に総経理が12カ月減俸の処分に。本件は企業の悪質なリストラという持病を露呈し、新卒の就業における権益の脆弱さが再び注目を集めている。
事件の経緯 107名への退職勧奨
Xingyuグループは国内の自動車用照明製造で首位に位置する企業だ。上半期の利益は9億9100万元、帳簿上の現金および預金は27億3800万元に上る。2025年秋の採用では2026年卒業予定の新卒440名を一括で採用した。しかし入社から約1カ月後、そのうち107名が退職勧奨の対象となった。人事部門は密室での面談で、二つの選択肢を提示したとされる。
一つは補償金を受け取って退職すること、もう一つは現職を離れて製造現場でネジ締め作業に従事することだ。さらに、いずれも選ばなければ自動的に後者を選択したものとみなすという運用が示された。人事担当者は、常州の人事担当者が参加する400人規模のグループが存在し、署名に応じなければ採用ブラックリストに載る可能性があると示唆したという。学生側が協議を求めても、「法的手続きを取ればいい」と拒否されたとされる。
対象となった新卒の多くは985大学や211大学の出身者で、修士や博士号取得者も含まれる。複数の内定を辞退してXingyuを選んだ者もいた。当初提示された職種は研究開発や技術、管理系であったが、突然の設定転換の打診は当初の説明と大きく異なっていた。採用時には人材として迎えられたにもかかわらず、退職勧奨の局面では消耗品のように扱われたという受け止めが広がった。
新卒が選んだ録音と外部通報の手段
事態を転換させたのは、退職勧奨を受けた新卒側の行動だ。2000年以降生まれの世代に当たる彼らは、面談の場で感情的に反発することなく、人事との会話を録音した。その後、告発資料を作成し、Xingyuの大口顧客であるフォルクスワーゲンとメルセデス・ベンツ、さらに同社が上場を計画している香港証券取引所に通報した。
三者はいずれも調査を行う旨を回答した。とりわけメルセデス・ベンツは返答の中で「重大な倫理および労働上の不適切行為が存在する」との厳しい表現を用いた。欧州連合(EU)への通報も行われたほか、国内のソーシャルメディアで当事者が窮状を発信したことで世論の関心が一気に高まった。業界関係者の間では、資金調達の頓挫や受注への影響を懸念する見方が広がった。
この手法は従来の労働紛争における対応とは異なる。個人による社内交渉や労働仲裁に留まらず、サプライチェーン上の顧客企業や資本市場という外部の規律付けの仕組みを直接利用した点が特徴だ。顧客企業にとっては自社のサプライチェーンにおける人権・労働基準の遵守が問われる問題であり、取引先の行為が自社の評判に波及する構図が明確になった。
謝罪と補償 総経理への減俸処分
世論の沸騰を受け、Xingyuは8月27日に謝罪文を発表した。判断に誤りがあり、管理に不備があったことを認め、退職勧奨の対象となった107名に対し3カ月分の求職生活手当を支給することを約束した。人事部門も面談の中で「個人の能力とは無関係」と説明していたことが明らかにされている。
同時に、同社は総経理であるZhou Xiaoping氏に対する処分を公表した。12カ月分の給与をカットする措置だ。学生が失ったのが人生を左右しかねない一つの職であるのに対し、経営トップが失うのは1年分の報酬であるという対比が、ソーシャルメディア上で皮肉を込めて語られた。
一連の採用と解雇を巡っては、地方政府が新卒採用に対して支給する雇用拡大補助金を狙ったものではないかとの疑念も浮上した。これに対し常州市人力資源・社会保障局は、不正な補助金受給の事実はないと釈明した。問題の本質は補助金詐取ではなく、協議の過程における手法が単純かつ硬直的で、有効な対話が欠けていた点にあるとの説明だ。ただし、なぜ440名を採用しながら4分の1に当たる107名を短期間で手放す判断に至ったのかという根本的な疑問については、明確な説明が示されていない。
業界に蔓延する新卒への使い捨て構造
今回の事案は単独の事例ではない。虎嗅網 の報道では、新卒を取り巻く類似の事例が常態化していると指摘されている。卒業旅行中に内定取り消しの通知を受け取るケース、入社後数日で提示されていた月給7000元が4500元へ引き下げられるケース、試用期間の終了を3日後に控えた段階で「職務要件を満たさない」として解雇されるケースなどが挙げられている。
企業側にとって、こうした手法は政府補助金の獲得や税負担の軽減、人件費の圧縮につながる可能性がある。一方で新卒側は、労働仲裁などの法的手段に訴えることで「厄介者」と見なされ、今後の就職活動に悪影響が及ぶことを恐れ、泣き寝入りを選びがちだとされる。大量の人員削減が中年層で起これば社会的な不安を招くのに対し、新卒が対象の場合は問題が可視化されにくいという非対称性も指摘されている。
特に試用期間を巡る運用は制度の抜け穴として機能している。正社員登用直前の解雇は、次の新卒採用枠を確保するための入れ替えとして利用されるとの見方がある。賃下げの提示も、応じなければ自己都合退職を促し、企業側の補償負担を回避する意図があると受け止められている。いずれも、雇用関係における情報と交渉力の格差を背景にしたものだ。
一度失えば戻らない新卒身分の脆弱性
中国の新卒を取り巻く制度では、卒業後の2年間が就職選択期間と位置付けられている。しかし一度でも社会保険への加入記録が付けば、新卒としての優位性は失われるとされる。企業がこの一時的かつ不可逆的な身分の特性を利用し、不利な条件を押し付けているとの批判がある。
今回退職勧奨を受けた107名の多くは、現在も適切な就職先が見つかっていないと伝えられている。給与や福利厚生への期待水準を自ら引き下げて就職機会を得ようとする動きも出ている。唯一の職務経験が製造現場での単純作業となれば、その後のキャリア形成における初期のつまずきは大きい。2026年卒業の新卒は1270万人規模に達しており、競争が激化する中で一度の離職が与える影響は深刻だ。
新卒という身分は、企業にとっては補助金や採用枠の面で利用価値が高い一方、学生にとっては極めて脆弱な立場でもある。企業と個人の力関係が固定化され、是正の仕組みが十分に機能していないことが、今回の騒動を通じて改めて浮き彫りになった。録音や外部通報といった手段が一定の効果を上げたとしても、失われた時間や機会が完全に戻るわけではない。
編集部の見解
短期的には、顧客企業や証券取引所といった外部の規律が企業の人事運用に対する抑止力として機能する事例が増えると見る。Xingyuのようにサプライチェーンの上流で高いシェアを持つ企業であっても、顧客からの倫理・労働基準に関する指摘は受注や資金調達に直結する。3〜6カ月の間では、類似の退職勧奨や試用期間終了直前の解雇について、企業側が手続きの透明性を高め、文書での合意形成を徹底する動きが広がる可能性がある。ただし形式的な手続きの整備に留まり、実質的な雇用保障につながらない懸念もある。 長期的な視点では、新卒身分と社会保険記録の連動や、試用期間制度の運用実態に対する制度的な見直しが焦点になると評価する。1〜3年のスパンでは、採用補助金の支給要件や、内定取り消し・賃下げに関する行政の監督強化が議論される可能性がある。学生側では、面談の録音や外部機関への通報といった自衛策が広がる一方、そうした対抗手段を持たない層との格差が拡大する恐れもある。大学や行政による事前の情報提供と相談体制の整備が問われる局面だ。
参考
- 「 恶意劝退107位应届生之后,星宇股份扣了女首富12个月工资 」, by 酷玩实验室coollabs — 虎嗅网, 2026-09-07T14:10:04.000Z (ARR)
- 元記事URL: https://www.huxiu.com/article/4889293.html?f=rss
よくある質問
- 星宇股份の新卒退職勧奨問題とは何か
- 2025年秋に新卒440名を採用した星宇股份が、入社1カ月で107名に退職勧奨を実施した事案だ。補償金での退職か現場への設定転換を迫り、応じなければブラックリスト登録が示唆されたとされる。外部通報を経て同社は謝罪し、3カ月分の手当支給と総経理の12カ月減俸を発表した。
- なぜ顧客企業や香港証券取引所への通報が効果を持ったのか
- 大口顧客であるフォルクスワーゲンやメルセデス・ベンツは、サプライチェーン上の労働・倫理基準を重視する。メルセデス・ベンツは重大な不適切行為があると回答した。香港証券取引所は上場審査で企業統治を評価するため、通報が資金調達や受注への懸念につながり、企業に迅速な対応を迫る圧力となった。
- 新卒の身分が脆弱とされる理由は何か
- 中国では卒業後2年間が就職選択期間とされるが、一度社会保険に加入すると新卒としての優位性が失われるとされる。企業はこの不可逆性を利用しやすい。今回の107名も離職歴が付いたことで再就職のハードルが上がり、給与水準を下げざるを得ない状況に置かれている点が問題視されている。
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