インターネットの声

Hainan Airlines、空席横臥を有料化 220ユーロで販売

Hainan Airlinesがエコノミーの空席横臥を禁止し3連席を220ユーロで販売。付帯収入拡大の動きが波紋を呼んでいる。

11分で読める SINGULISM 編集チームが確認・編集

Hainan Airlines、空席横臥を有料化 220ユーロで販売
Photo by Tim Raderschad on Unsplash

Hainan Airlinesの長距離便で、空いている3連席に横になって休む行為が有料化された。客室乗務員が就寝中の乗客を起こして元の座席に戻す運用が確認され、ソーシャルメディア上で不満が広がっている。虎嗅網 の 旅界 の報道では、この措置は偶然の快適さを回収して値札を付ける動きだと位置づけられている。

無料で横になれるという長距離エコノミーの暗黙の了解が、明確な料金体系に置き換えられつつある。背景には付帯収入への依存度の高まりと、中国・欧州路線を取り巻く競争環境の変化がある。

空席で横臥したら起こされた事例

発端はエディンバラ発北京行きの便での出来事だ。搭乗直後、客室内は空席が目立ち、周囲数列に誰もいない状態だったという。照明が落とされた後に隣の空いた列へ移動して横になったところ、眠りについた直後に客室乗務員に起こされ、搭乗券に記載された元の座席に戻るよう求められた。乗務員は横になりたい場合は有料の3連席サービスを購入できると案内した。

この乗客が理由を尋ねても、回答は定型的だった。有料の3席サービスを提供しており、購入しなければ他の座席を占有できないという説明が繰り返された。空席を数時間利用するだけなら誰にも迷惑はかからないという主張は受け入れられなかった。

当初は一部の乗務員による厳格な対応と受け止められたが、ソーシャルメディアでの検索が異なる実態を示した。虎嗅網 の 旅界 の報道では、Hainan Airlinesのエコノミークラスで自由に横になれないという体験は、多数の長距離利用者に共通しているとされる。

Hainan Airlinesは長距離便で乗客が無料で空いている並びに移動して横になることを禁止し、客室乗務員はすでに眠っている乗客を起こした上で、3連席を有料で購入できることを案内する

関連する投稿は年明けから断続的に現れ、ここ数カ月で増加が顕著になっている。機内に丸ごと空いた列があるのに横になった途端に戻されたという報告や、同行者とそれぞれ1列を使おうとした外国人旅客が制止されたという事例もある。昨年はまだ自由に横になれたが、今年は運用が変わったという声も投稿されている。

欧州カウンターに掲示された220ユーロ

料金体系は空港カウンターで可視化されている。ネット上で拡散した欧州のある空港の写真によれば、Hainan Airlinesの有料アップグレードは760ユーロ、エコノミークラスの最前列および非常口座席は110ユーロ、そして3連席を独占するには隣の2席を追加購入する必要があり、合計で220ユーロと表示されていた。

1人で複数座席を販売してエコノミーで横になれる空間を提供する手法自体は新しいものではない。Air New Zealandは2011年にSkycouchを導入し、一部のボーイング777および787で座席下のレッグレストを跳ね上げて長さ約1.55メートル、幅74センチのソファベッドを形成する商品を展開した。国内ではChina Southern Airlinesが2019年に同様の商品を導入し、Air Chinaもアプリ内で隣接する空席の販売を行っている。

Hainan Airlinesが目立っている理由は、複数座席販売の先進性ではない。機内での厳格な取り締まりと、カウンターでの明確な料金表示が組み合わさった点が、ソーシャルメディアでの不満を増幅させている。乗客の多くは前方座席や非常口座席の有料化は受け入れている。一方で、搭乗率が低い場合にドアクローズ後も丸ごと空いた列が残ることは珍しくなく、移動して休む行為は国内の長距離便でも大抵は黙認されてきた経緯がある。今回の措置は、その運次第の余白を制度的に終わらせるものとして受け止められている。

付帯収入1570億ドルへの依存度

背景には航空会社の収益構造の変化がある。航空会社は本来航空券に含まれていた座席指定や受託手荷物などの要素を順次切り離し、個別に課金する方向へ舵を切ってきた。一部の米国航空会社では最安運賃で機内持ち込み手荷物さえ制限し、座席指定料金を支払わなければチェックイン時にシステムが座席を割り当てる運用も存在する。航空会社側は必要に応じた支払いという説明を用いるが、利用者からは航空券に含まれていたものが一つずつ取り除かれたという受け止めが広がっている。

収益面での効果は大きい。航空コンサルティング会社IdeaWorksの試算によると、2025年の世界の航空会社の付帯収入は1570億ドルに達し、業界全体の収入の約15.7%を占めると予測されている。従来型航空会社の2024年の平均運賃関連収入が低下する一方で、乗客1人当たりの付帯収入は5.3%増加した。運賃自体を安く設定しても、搭乗前後の追加支払いによって事業を成立させる構造が強まっている。

中国・欧州路線に特有の事情も重なる。かつて一部の大陸間路線は地方政府の補助金に支えられて市場が育成されたが、2024年以降は路線補助金の範囲が大幅に制限された。ロシア・ウクライナ紛争の影響で欧州の航空会社はロシア領空を飛行できず、British AirwaysやVirgin Atlanticは一部の中国路線から撤退し、Lufthansaも一部の中国路線で運航規模を縮小した。中国の航空会社はこの隙にシェアを拡大したが、価格競争は激化した。

欧州路線は距離が長く、燃料費や乗務員コストの圧縮は容易ではない。出国需要が弱い月には航空券価格が下がっても客室内に多くの空席が残ることがある。Hainan Airlinesのように、追加コストをほとんどかけずに隣の2席を220ユーロで販売できるのであれば、ドアが閉まった後に空席のまま目的地まで運ぶよりも収益化できる。すべての乗客が搭乗し終えた時点で残った座席は次の便に回して販売できないため、同一便内での収益化は魅力的な選択肢となる。誰かが220ユーロを支払って3連席を購入した隣で、別の乗客が無料で同じ体験を得られる状況を放置すれば、次回以降の購入意欲は低下する。空いた列を適正な価格で販売するには、無料で横になれる可能性を先に断つ必要があるという論理が、厳格な取り締まりを必然化している。

サービス設計の未成熟が生む摩擦

課金の論理が成り立つとしても、商品としての完成度が運用の摩擦を生んでいる。Hainan Airlinesの3連席は、普通のエコノミークラス座席を並べただけの構成だ。ひじ掛けは上げられても座席間の隙間は残り、3席分の横幅も限られる。成人であれば体を丸めて休む必要があり、寝返りで背もたれにぶつかりやすい。揺れの区間では通常の安全ベルトが横臥姿勢に適さないという課題もある。料金表に横になれると記すだけで、マットレスや寝具、横臥用の安全ベルトといった付帯物は提供されていない。

対照的に、Air New ZealandのSkycouchは座席用パッドと寝具、横になるための専用のリング状安全ベルトを提供し、客室乗務員が搭乗後に使用方法を説明する。LufthansaのSleeper’s Rowも、離陸前に残った普通のエコノミークラス座席を活用する点ではHainan Airlinesに近いが、料金は159〜229ユーロでマットレスが付属し、ビジネスクラス品質の枕と毛布が提供される。成熟した商品との差は明確だ。

運用面の負担は客室乗務員に集中する。乗客が眠った後に起こして取り締まる必要があり、対応にはばらつきが生じる。ある便では黙認され、別の便では厳格に注意されるという不統一は、ルール自体への不信を高める。眠りを中断される体験は不満を招きやすく、放置すれば有料購入者との公平性が崩れる。商品設計が追いつかないまま料金徴収と取り締まりだけが先行すれば、現場での衝突は避けられない。

長距離便で細分化する睡眠の商品化

エコノミークラスにおける睡眠の商品化は、さらに細分化する方向にある。Air New Zealandは2025年に睡眠用カプセルSkynestを導入する計画で、価格は495ニュージーランドドル/4時間とされる。United Airlinesはソファベッドに変形するRelax Rowの導入を予定している。いずれも横になるという行為を独立した商品として切り出す試みだ。

長距離便で横になれるビジネスクラスは、通常エコノミークラスの3〜4席分の客室面積を占有する。ラウンジや洗練された機内食を求めず、眠ることだけを重視する層にとって、3連席はエコノミーとビジネスの間の空白を埋める位置づけになる。需要自体は存在する。

今後、長距離便では睡眠時間や占有する空間に応じて個別に課金される構造が強まる可能性がある。無料で横になれる余白は縮小し、空席の占有は正式な商品として販売される。Hainan Airlinesの動きは、その転換を象徴する事例と位置づけられる。航空会社にとっては収益機会の拡張であり、乗客にとっては運賃に含まれるものと追加で支払うものの境界が再定義される過程だ。客室内の空席をどう扱うかという運用の問題が、航空券の価格設計そのものに影響を与え始めている。

編集部の見解

短期的には、長距離エコノミーにおける空席の黙認文化は急速に後退すると見る。Hainan Airlinesの運用が可視化されたことで、他社も有料の複数座席商品を明確化し、機内での移動や横臥を制限する動きが広がる可能性がある。乗客は搭乗前に追加座席の購入を判断する必要が生じ、空港カウンターやアプリでの販売導線が強化されると評価する。 長期的には、睡眠という体験が座席という物理的な区画から切り離され、時間と面積で課金される商品へ進化すると見る。マットレスや専用ベルト、寝具を含むパッケージ化が進めば、エコノミーとビジネスの間に新たな価格帯が定着する可能性がある。一方で、商品の品質が料金に見合わなければ、ブランドへの信頼を損なう要因になると評価する。 編集部からの問いとして、空席の収益化と公平性の両立をどう設計すべきだろうか。眠っている乗客を起こす運用は、顧客体験の毀損と有料購入者の納得感のどちらを優先するのかという選択を迫る。安全ベルトの適合性や揺れへの対応など、安全面の基準をどこまで商品に組み込むべきかも問われている。

参考

よくある質問

Hainan Airlinesの3連席サービスはどのように購入するのか
欧州の空港カウンターの掲示では、隣の2席を追加購入することで3連席を独占でき、合計220ユーロと案内されている。事前のオンライン販売や搭乗時の販売など、購入経路は便や空港によって異なる場合がある。詳細は予約時やチェックイン時に航空会社へ確認する必要がある。
なぜ航空会社は空席での横臥を有料化するのか
付帯収入の拡大が背景にある。世界の航空会社の付帯収入は2025年に1570億ドルに達すると予測され、業界収入の約15.7%を占める。中国・欧州路線では補助金制限や競争激化で運賃だけでの収益確保が難しく、空席を同一便内で収益化する動きが強まっている。
他社の類似サービスとの違いは何か
Air New ZealandのSkycouchは専用のパッドや寝具、リング状の安全ベルトを提供し、LufthansaのSleeper's Rowはマットレスや枕・毛布が付属する。Hainan Airlinesの現行の3連席は通常のエコノミー座席を並べた構成で、付帯物の提供がない点が成熟した商品との主な差異とされている。 ## 参考 - [経済舱最後的羊毛,被航司盯上了](https://www.huxiu.com/article/4887796.html?f=rss) — 2026-09-01公開
出典: 虎嗅网

コメント

← トップへ戻る