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記憶は半数のシナプス消失後も残存する 脳の新的な保存機構

岳沖大学の研究者がマウスを人工冬眠状態にし、半数以上のシナプスが消失する条件下でも記憶が保持されることを確認した。

5分で読める SINGULISM 編集チームが確認・編集

記憶は半数のシナプス消失後も残存する 脳の新的な保存機構
Photo by Robina Weermeijer on Unsplash

沖縄科学技術大学院大学の研究が示す記憶保持の謎

Jacek Krywko が Ars Technica で報じた記事に基づく。

記憶がどのようにして保存されているかに対する主要な仮説は、学習すると、関与するニューロン間の結合が強化され物理的に大きくなり、それが記憶を構成するというものだ。問題は、これらの結合が時間とともに大きく変化し、可塑的であることだ。「1日目と4日目や5日目の結合の設定を比較すると、それは全く、全く異なっている」と沖縄科学技術大学院大学の神経科学者、田中和正は語る。

田中のチームは、何年も持続し得る記憶が、数日ごとに姿を変えるハードウェア上にどのように存在し得るのかを明らかにするため、その変化をより劇的にした。最近のScience誌の研究で、彼らはマウスに冬眠に似た状態を人工的に誘発し、これは基本的にシナプスの状態の半数以上を消去した。にもかかわらず、マウスは記憶を保持しているように見受けられた。

任意に操作可能な人工冬眠技術QIH

冬眠はリス、ハムスター、熊が得意とするものだが、それを引き起こす神経回路は哺乳類全体に保存されており、野生で冬眠しない種(例えばマウス)にも存在する。筑波大学の櫻井武神経科学者らが2020年に開発した技法は、視床下部にあるQニューロンと呼ばれる細胞集団を人工的に活性化することである。これにより、体温が約20摂氏度まで低下し、心拍数と呼吸数が大幅に減少する「Qニューロン誘発性低体温・低代謝状態(QIH)」が生じる。

田中は「ある種のリスは体温を凍点付近まで下げる深い冬眠に入るが、熊は体温を36~37度に保つ。人工冬眠はその中間のスペクトルにある」と説明する。QIHの最も重要な点は、望むタイミングでオン・オフを切り替えられることだ。実験ではマウスは48時間この状態に留められ、その後覚醒した。

実験結果:活動の70%低下とシナプスの大規模消失

QIH中にシナプスがどの程度失われるかを明らかにするため、田中のチームは自由に移動するマウスの海馬に微小電極束(テトロード)を植入し、個々のニューロンの発火を記録した。冬眠状態になると神経活動は約70%低下した。また、一部の動物の脳組織を、冬眠前・冬眠中・通常状態に戻数日後に、連続断面走査電子顕微鏡法を用いて観察した。

編集部の見解

短期的影響 今回の発見は、記憶の基盤に関する基本的な神経科学の理解を深化させるものだ。アルツハイマー病などシナプスの喪失が進行する神経退行性疾患の研究にも示唆を与える可能性がある。記憶がシナプスの冗長性や、回路全体の構造パターンに分散して保存されているとする仮説の検証が加速し、新たな介入戦略の開発につながるかもしれない。 長期的視点 1〜3年スパンでは、この知見は脳と計算の境界を再定義する可能性がある。生物脳が示すこの極めて堅牢な記憶保持メカニズムは、耐障害性の高いニューラルネットワークや、長期記憶を持つAIアーキテクチャの設計に直接影響を与えるだろう。また、低代謝状態の利用は、宇宙探査や長期間の医療処置における脳機能の維持といった応用研究の新たなフロンティアを拓くことにもなり得る。 編集部からの問い 記憶が半数のシナプスを失っても保持されるという事実は、記憶の「場所」が特定の結合の強度そのものではなく、より高次の回路構造や活動パターンに依存していることを強く示唆する。

参考

出典: Ars Technica

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