ガジェット

DJI、米控訴裁判で一部勝訴 軍事企業指定の審理再開へ

米控訴裁判所がDJIの「中国軍事企業」指定について、機密記録を未閲覧のまま維持した下級審判断を覆し、審理を差し戻した。

7分で読める SINGULISM 編集チームが確認・編集

DJI、米控訴裁判で一部勝訴 軍事企業指定の審理再開へ
Photo by david henrichs on Unsplash

米ワシントンD.C.連邦控訴裁判所は2026年8月18日、ドローン大手DJI Technologyが米国防部の「中国軍事企業」指定に対して提起した訴訟において、部分的に下級審判決を覆す判断を下した。裁判所は、政府の中心的な主張である「DJIが中国の防衛産業基盤に貢献している」とする根拠について、下級審判事が機密資料を閲覧せずに判断を下していたことを指摘し、この争点の審理を差し戻した。DJIはリストに残るが、初めて機密記録が法廷で精査されることになる。

この指定は、2021年の国防授権法第1260H条に基づくものだ。米国防部は2024年12月、DJIを「中国軍事企業」リストに追加した。非公開版の指定報告書では、DJIが防衛産業基盤に貢献するという主張の根拠部分が全面的に黒塗りだった。控訴裁判所の判断書によれば、見出し「DJI Contributes to the Chinese Defense Industrial Base」の下の文章はすべて消されている。

三名の陪席判事パネルを率いたブラッドリア・ガルシア判事は、判決の中で「防衛省がDJIが中国の防衛産業基盤に貢献すると信じる理由は、公に述べられていない」と指摘した。事件を審理した地区裁判所のポール・フリードマン判事は2025年9月、DJIに対する略式判決を認めたが、その過程で政府の裁判所提出書類や報告書の他の部分に依拠し、機密バージョンを閲覧することはなかった。控訴裁判所は、行政機関の行為は機関自身が提示した根拠のみで判断すべきという法的原則に違反すると結論づけた。

一方で、控訴裁判所はDJIの他の三つの主張を退けた。これにより、DJIは現在もリストに残されることになる。退けられた主張には、Due Process(正当手続)の侵害や、指定が事業を大規模に妨げるという論点が含まれる。特に、DJIの市場支配率がDue Processの主張にとって逆効果となった。裁判所に提出された証言では、DJIはグローバル消費者ドローン市場の90%、ドローン市場全体のほぼ70%を占めるとされている。裁判所は、失われた契約や州レベルの規制が、指定がDJIの事業を「大幅に妨げる」という水準には「大幅に及ばない」と判断した。

DJIが受けた認定の一つも争点となった。2021年に中国国家発展改革委員会から「国家企業技術センター」の認定を受けたことだ。 Pentagonの報告書によれば、この認定には500万〜1500万元(約1億円〜3億円)の現金補助金、輸入設備の優遇税率、国有資本金基金からの財政支援が伴う。DJIの弁護団は、会社がこの認定を通じて実際に援助を受けたことはないと主張したが、裁判所はこれを「弁護士による自己都合の主張」として却下した。この認定は、中国政府からの援助を知りながら受けているという政府の主張の根拠となった。

DJIの広報担当者は Tom’s Hardware に対して「裁判所が公開記録には十分な証拠がないとの判断を下したことは、根拠のない指定を是正するための重要な一歩だ」との声明を発表した。しかし、同社がリストから削除されるまでの道のりは依然として長い。現在、事件はフリードマン判事のもとに戻り、彼は初めて機密記録を閲覧し、DJIが防衛産業基盤に貢献しているかどうかを判断する。この判断は、DJIの米国事業に直接影響を与える可能性がある。

この訴訟は、米中のテクノロジー摩擦における法的戦場の複雑さを示している。機密情報に基づく政府の判断を、裁判所がどこまで精査できるかという論点は、DJIに限らず多くのテック企業に関わる問題だ。特に、ドローン技術が民生用と軍事用の境界線上にあることは、この事例を象徴している。DJIは民用ドローンの世界的リーダーだが、その技術が軍事転用されうるという懸念が、国家安全保障上の論点として存在する。

編集部の見解

短期的に見れば、この判決はDJIにとって程序上の勝利に過ぎない。リストからの削除を直接命じたわけではなく、審理を下級審に戻しただけだからだ。DJIがリストに残る間、米国政府との取引制限や公共調達からの排除は継続する。しかし、機密記録の審理が開始されることで、政府の根拠の実体が初めて法的検証を受ける点は意義がある。今後3〜6ヶ月で、機密資料の内容如何によっては、DJIの指定が覆る可能性と、さらに強化される可能性の両方が残されている。 長期的には、この訴訟は外国テクノロジー企業に対する米国の規制アプローチの先例となる。機密情報に基づく政府の判断に、司法審査はどの程度有効かという根本的な問題を突きつけており、今後の半導体やAI関連企業への規制にも波及しそうだ。テクノロジーと安全保障の交差する領域において、開示と非開示の境界線をどこに引くかという論点が、業界全体のリスク管理の指針を変える可能性がある。 編集部からは、機密記録の内容が如何に判断を左右するかという点が最も注目される。もし政府の根拠が具体的で強固であれば、DJIの指定は維持され、中国テック企業全体への規制強化の根拠となる。

参考

よくある質問

DJIが米国で「中国軍事企業」と指定された法律的根拠は何ですか?
2021年の国防授権法第1260H条に基づきます。米国防部が中国軍と関連があると判断した企業をリスト化し、政府調達や資金調達を制限する制度です。DJIは2024年12月にこのリストに追加されました。
控訴裁判の判決で、具体的に何が変わったのですか?
裁判所は、下級審判事が機密資料を閲覧せずに政府の主張を支持したことを指摘し、主な争点の審理を差し戻しました。DJIの他の主張は退けられたため、同社はリストに残りますが、初めて機密記録の審理が行われることになります。
この判決はDJIの製品や消費者に影響しますか?
短期的には、DJIの米国市場での新規契約や政府調達は引き続き制限される可能性があります。しかし、消費者向けドローンの販売自体は直接禁止されていないため、影響は限定的です。長期的には、審理結果次第で事業環境が大きく変わる可能性があります。
出典: Tom's Hardware

コメント

← トップへ戻る