AI危機1年でSSD価格220%高、DIY市場直撃
AIコンポーネント不足から1年、SSD価格が最大220%以上高騰。Samsung 990 EVO Plus 2TBは$113から$363に。DIY市場の厳しい現状を分析する。
Tom’s HardwareのStephen Warwickが報じたところによれば、PCストレージ市場はAIコンポーネント危機の影響を1年にわたって受け続け、SSD価格が暴騰している。同誌が2025年Amazon Prime Day時点の価格と現在を比較した結果、最大220%以上の値上がりが確認された。DIY市場でPCを自作するユーザーにとって、もはやSSDは廉価なストレージではなくなった。
この価格高騰はRAM市場と同様の構造的要因による。AI向けHBM(High Bandwidth Memory)やデータセンター向けNANDフラッシュの需要が生産能力を圧迫し、民生向け製品の供給を大幅に絞っている。さらにMicronの消費者向けブランド「Crucial」が事実上市場から撤退したことも、競争環境を悪化させた。SSD市場はRAM市場よりもはるかに複雑で、M.2 NVMe(Gen 4/Gen 5)、SATA III、外付けドライブなど選択肢が多く、性能帯も価格帯も広い。しかし高騰の波は全カテゴリに及んでいる。
1年で3倍超に跳ね上がったM.2 SSD
Tom’s Hardwareの調査では、具体的な製品の価格推移が示されている。2025年Amazon Prime Dayで$113(約59%引きのセール価格)で販売されていたSamsung 990 EVO Plus 2TBは、2026年7月現在、同じく36%引きのセール価格で$363.49となった。定価は$579.99であり、2025年5月には一時$465まで高騰した。これは1年前の実売価格の約4倍である。
同じく人気の高いWD Blue SN5000 4TBは、1年前に$214(GB単価約5セント)で購入できたが、現在は$449.99(GB単価11.2セント)と約2倍に値上がりした。Silicon Power UD90 4TBも$209から$440前後へと跳ね上がっている。
Tom’s Hardwareのデータを表にまとめると以下の通り。
- Samsung 990 EVO Plus 2TB: 1年前$113 → 現在$363.49(+221.5%)
- その他4TB M.2ドライブ: 1年前$200台前半 → 現在$400台半ば(約2倍)
DIYベンチマークビルドとして同誌が推奨する1440p・Ryzen 7 7800X3D構成では、わずか1年前にSSDにかかるコストが$113だったのに対し、現在は$363と、他のパーツの価格変動を遥かに超えるインフレを示している。
SATA IIIも逃げ場にならない
コスト削減のために性能を落としてSATA IIIインターフェースのSSDを選択するのは合理的に思えるが、現実は異なる。Tom’s Hardwareが継続監視するSATA SSDも同様に価格が高騰している。具体的なモデル名は記事中に明記されていないが、「SATA IIIドライブも値上がりしており、M.2からの乗り換えによる節約効果はほとんどない」と報じられている。
SATA SSDのGB単価は以前はM.2よりも安かったが、現在はNANDフラッシュ全体の需給逼迫が価格を押し上げているため、インターフェースの違いによる価格差は縮小している。DIYユーザーにとっては、大容量ストレージを求める場合、外付けHDDやUSBメモリなど代替手段へのシフトを検討せざるを得ない状況だ。
背景にあるAIコンポーネント危機
この価格高騰の根本原因は、AI向け半導体の需要爆発にある。データセンター向けHBMや高帯域NANDフラッシュの生産にリソースが集中し、民生向けNANDフラッシュのウェハー供給が大幅に減少した。特に主要メーカー(Samsung、SK hynix、Micron、Kioxia/WD)は、AI用製品の歩留まり向上と生産拡大に注力しており、コンシューマー向けの生産ラインを縮小している。
加えてMicronの消費者ブランド「Crucial」の実質的な撤退は、競争をさらに減退させた。過去にはCrucialが価格競争のけん引役となることが多かったが、現在はその役割を果たすプレイヤーが不在である。結果として、SamsungやWestern Digital、SK hynix傘下のSolidigmなどが市場を寡占し、価格設定に強い支配力を持つに至っている。
DIY市場への深刻な影響
PC自作市場はこの価格高騰に直接的な打撃を受けている。CPUやGPUの価格上昇に加え、RAMとSSDの値上がりが重なり、エントリーからミドルレンジの自作PCの総コストは1年前と比べて数百ドル単位で増加した。特に2TB以上を必要とするユーザー(ゲーマー、クリエイター、ホームラボ構築者)にとって、コストパフォーマンスは著しく悪化している。
Tom’s Hardwareのデータは、DIYユーザーが「今買うべきか、値下がりを待つべきか」という難しい判断を迫られている実態を示す。2026年後半の価格見通しは、NANDメーカーの投資計画とAI需要の持続性に依存するが、少なくとも2027年前半までは緩和が期待しにくい状況だ。
編集部の見解
短期的には、2026年後半もSSD価格の高止まりが続く可能性が高い。NANDフラッシュメーカーはAI向け生産にリソースを集中しており、民生向けの増産は期待できない。年始の需要期に向けて価格がさらに上昇するリスクもあり、DIYユーザーは予算組みに余裕を持たせる必要がある。特に2TB以上の大容量モデルは、割高感が顕著だ。 長期的に見れば、AI向けHBM需要が一巡し、NANDメーカーが新工場の生産を本格化させる2028年ごろには、徐々に価格が正常化する可能性がある。ただしその間、Micron撤退後の市場構造は寡占状態が続き、かつてのような「GB単価5セント」の時代が再来するかは不透明だ。SSDはもはやコモディティではなく、高価な投資対象として位置づけられるだろう。 編集部としては、DIYコミュニティが価格高騰に対してどのような戦略を取るべきか、という問いが重要と考える。例えば、当面はHDDと小容量SSDの併用でしのぎ、値下がりを待つというアプローチも選択肢の一つだ。
参考
- 「 State of play: SSD pricing one year into the AI component crisis — 220% price increases are crippling the DIY market 」, by Stephen Warwick — Tom’s Hardware, 2026-07-29T10:52:51.000Z (ARR)
- 元記事URL: https://www.tomshardware.com/pc-components/ssds/state-of-play-ssd-pricing-one-year-into-the-ai-component-crisis-220-percent-price-increases-are-crippling-the-diy-market
よくある質問
- なぜSSD価格がこれほど高騰しているのか?
- 主因はAI向け半導体需要によるNANDフラッシュの供給逼迫である。データセンター向けHBMや高帯域NANDに生産リソースが集中し、民生向けのウェハー供給が減少。加えてMicronの消費者ブランド「Crucial」撤退により競争が減退したことも価格上昇に拍車をかけている。
- SSD価格はいつ下がる見込みか?
- 現時点では2027年前半までの価格緩和は期待しにくい。AI向け需要が一巡し、NANDメーカーの新工場が本格稼働する2028年ごろに徐々に正常化する可能性がある。ただし、かつての低価格帯に戻る保証はない。
- 今SSDを購入すべきか、それとも待つべきか?
- 緊急に必要でなければ待つ方が賢明かもしれない。ただし価格がさらに上昇するリスクもある。現実的な戦略としては、必要な容量を最小限に抑え、HDDやクラウドストレージを併用する方法が考えられる。中古市場の活用も選択肢の一つだ。 ## 参考 - [Tom's Hardware: State of play: SSD pricing one year into the AI component crisis — 220% price increases are crippling the DIY market](https://www.tomshardware.com/pc-components/ssds/state-of-play-ssd-pricing-one-year-into-the-ai-component-crisis-220-percent-price-increases-are-crippling-the-diy-market) — 2026-07-29公開 - [Pixel 11値上げ確定、RAM高騰が価格構造を変える (当サイト)](https://singulism.com/ja/pixel-11-ram-price-hike) - [Framework、LPCAMM2メモリを倍額値上げ 64GBで約2倍に (当サイト)](https://singulism.com/ja/framework-lpcamm2-memory-price-double)
コメント